プラチナ #3776センチュリー(Platinum #3776 Century)

イメージ 1

プラチナが満を持して従来の#3776に替えて発売したニュースタンダード。
7月にパイロットモデルとして透明軸の「本栖」を発売していましたが、限定品という事でお値段はちょっと高めの15,750円でした。今回は#3776の後継モデルという事で値上げ無しのスタンダードモデル価格の10,500円で発売されています。

旧#3776は悪いペンではなかったのですが、個人的にちょっとイマイチだと思っていた点。
少し使わないとすぐにペン先が乾く。
インクフローが渋め。
軸やトリム部分の質感が安っぽい。
こういった点をモデルチェンジでしっかり改善してきています。

まずはペン先の乾きについては本栖で発表されたスリップシール機構、スプリングでペン先に密着するインナーキャップですね。ペン先の乾燥を防ぐとともに、ポンピング(キャップによるインクの噴出)を防ぐとされています。これまでプラチナの万年筆については使わない期間が一週間程度でも、少し最初に掠れを感じることがありました。しかしこのセンチュリーに関してはそのレベルでの乾燥はほとんど感じません。

センチュリーの場合黒軸なので、視覚的にスリップシールを見ることはできませんが、ねじ込む際に最後の1/4回転ほどばねの抵抗を感じます。
 
インクフローについてはペン芯の変更が大きいようです。どーむは非常に早書きの人なので、インクの吸収量の多い紙にプラチナのペンで書くとフローが追い付かないことがありました。センチュリーについてはインク供給が安定していて、非常に快適に書くことができました。かと言って出し過ぎの傾向も無く、安定感のあるペンになった感じがします。

またインク噴出によるペン先の汚れも少なく、スリップシールに効果とペン芯の改良の両方の効果が出ているようです。実際にはもう少し長い期間使ってみたところで不満点は出るかもしれませんが。
 
イメージ 2

軸やトリムの質感は、旧モデルでは妙にてかてかした安っぽい質感だったものが、少し落ち着いた光沢になったような気がします。また旧モデルを安っぽく見せていたキャップリングもダブルリングとすることで高級感を出しています。

軸径もφ13.1mmと旧モデルより1mmほど太くなっており、存在感を上げるのに寄与しているのだと思います。
惜しむらくはここまで作りこんだにもかかわらず、相変わらずオリジナリティのかけらも無いデザインから脱却できなかったことでしょうか。黒/金のバランス型が日本人のイメージする「ザ・万年筆」なんでしょうけども、相も変わらず国内大手3社が同じようなデザインを「スタンダード」としているのは不思議です。
 
イメージ 3

ペン先・ペン芯は新設計の物が与えられています。
1万円クラスの万年筆としては大きなペン先は旧モデルと同じです。パイロットやセーラーの2万円クラスのペン先と比較しても劣らない立派なサイズはセールスポイントになりえると思います。

前述の通りペン芯は基本的な構造から変えているようで、見た目も今までのプラチナにはない角の立ったシャープなデザインです。
 
今回の#3776センチュリーは他社の1万円クラスどころか、2万円クラスと並べても見劣りしない押し出しの効いたペンになりました。これまで1万円クラスの万年筆が欲しいという相談があった時は、敢えて12,600円のセーラーを勧めていましたが、これからはこちらを勧めようという出来上がりです。

ただ不安な点が無いわけではなく、インクフローを上げた事によりプラチナの小さなコンバーター容量が物足りなくなる可能性。現在も古典ブルーブラックインクを使っているプラチナが、キャップの重要な機構にに金属を使った事による耐久性の不安。セルロイドやブライヤーなどの#3776シリーズへの展開がどうなるのか。
 
等々色々見守りたい部分はありますが、個人的には非常に評価の高い新製品ですね。